第十六章 交錯する心

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 二人のゲーマーが操るマッチョなキャラクターの闘いは、一気に火花が散りはじめてエキサイトしていく。それに合わせて見守るギャラリーもヒートアップしていく。  形式は1試合(ゲーム)3ラウンドのうち2ラウンド取ればその試合(ゲーム)に勝利し、2試合(ゲーム)先勝したプレイヤーが勝者になる。  格闘ゲームの勝敗そのものは基本シンプルだ。ゲーム画面上部、プレイヤーのサイドにそれぞれ表示されている棒グラフ状のライン、体力ゲージが、ダメージを受ければうけるほど減っていく。そのゲージが先にゼロになったほうが負けになる。  けれど上級者になればなるほど、勝利へのプロセスは複雑になる。  多種多様な技を繰り出すためのコマンドを正確かつ素早く入力できる技術力、過去の試合展開を頭に刻み込んで分析し、その後実戦で生かしていける記憶力、瞬時に反応できる反射神経、強いプレッシャーにも負けない精神力、戦略をたて実行する創造力と実行力。  シビアな対戦で勝ち続けるためには総合的な力が要求される。その能力が高い、一握りのゲーマーしかプロにはなれない。  神谷はその総合力で突出しているからこそ日本でナンバーワン、世界でもトップファイブにはいる実力をもつ。その次世代トップランナーが新太だ。  日本で指折りのゲーマー二人が惜しみなく繰り出す、複雑なコマンドを駆使した大技、攻撃と防御のせめぎあい、ギリギリの駆け引き。  エキシビションマッチとはいえ、全く手を抜かない、格闘ゲームの醍醐味を体現したような二人の闘いぶりに、コアなゲームファンであるギャラリーから歓声、ため息、拍手が飛ぶ。
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