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心を読まれたような問いに、思わず神谷の手を強く握りしめてしまい、いてえよと笑いながら手を外された。
「お前の後ろ、ギャラリーの中にいたよ、川島サン。俺の正面だったから見えたんだ。ムサイ男ばっかりの空間に、あんな綺麗なコがいたらイヤでも目立つし。よく見えなかったけど背の高い男と一緒にいたみたいだったな。対戦が終わった後、すぐ出ていったみたいだけど」
そこまで神谷が話したところで、イベントの司会者がマイクをもって二人の間にはいってきた。
新太の頭は真っ白になっていた。司会者がなにかを尋ねてきたけれど、言葉が頭にはいってこない。
胸の奥がぐらぐら揺れるような嫌な感じが新太を突き動かす。弾かれたようにギャラリーのなかに飛び込んだ。
背中で神谷がなにか叫んでいたのが聞こえたけれど、ふりかえりもせず、ギャラリーにもみくちゃにされながら、新太は必死に出口に向かった。
外に出てからも必死で走った。ゲームセンターから最寄り駅はひとつしかない。そこを目指して走る。
徒歩十分くらいとして、ギリギリ追いつくことができるかもしれない。さくらが駅構内に入ったらアウトだ。ゲームセンターの舞台からそのまま飛び出してきたのだから、スマホも財布も持っていない。
コンビニの角を曲がり、駅まで直線になったそのとき。前方百メートルくらい先にそれらしき男女の後ろ姿を見つけた。
さくらと一緒にいるのは予想通り司だった。苦々しい気持ちがわきあがり胸を圧迫するから、余計息が切れる。
二人が寄り添って歩いているのをみるだけで、さきほどの敗北で溜まったフラストレーションが更にふくらんで、新太の内側で破裂してしまいそうだ。
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