第十六章 交錯する心

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 かなりキツイ口調になっているのを、新太は自覚はしていたけれど止められない。  さくらは唇を開きかけ何かを言おうとした。けれど結局数秒後、小さな声でごめんなさい、と呟いただけだった。その声の感じが妙に他人行儀で、新太の怒りを針でさすようにさらに刺激する。 「謝らなくていいから。答えて」  怒りを抑えようと思えば思うほど、言い方がきつく、冷たくなってしまう。さくらの瞳が揺れたあと、きゅっと新太を見つめた。 「邪魔をしたくなかったの。私が見ているとわかったら、新太くん、集中できないかもしれないし」  確かにさくらが一人、男たちの中に埋もれていると知ったら、集中力は大きく削がれたかもしれない。けれど司と二人でこっそり見に来られるのはもっと嫌だった。 「言ってくれれば、俺がつれてきたのに」  恨みがましくそう呟くと司が大きくため息をついた。 「さくらが言える訳がないだろう。アジア大会で負けて、このエキシビジョンマッチに向けてぴりぴりしていたお前に」  相変わらず痛いところを突いてくる司の言葉に、我慢していたものが一気に切れそうになるのをなんとか堪える。 「あんたには関係ない」  冷たくそういって睨んだ新太に、司もきつい瞳をむける。 「あるね。ゲーマーとしてのトップも、さくらも取るっていったのはお前だろ。けど神谷に完敗して、しかもさくらも泣かせている。俺、言ったよな、さくら泣かせたら横からかっさらうって」    その言葉に溜まり溜まったフラストレーションの束がはじけ、怒りがほとばしる。気がついたときには司の襟首を掴んでいた。さくらが、あっと小さく叫ぶ。
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