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居酒屋のテーブルをがん、とにぎり拳で叩いた。テーブルにのっている皿やコップが、がしゃんと大きな音をたてたから、まわりの喧騒がピタリとやんだ。
新太と神谷に視線が集まる。神谷だけは全く動じることなく、こいつウーロン茶で酔っぱらってるから気にしないで、などと涼しい顔でまわりにいう。
「振られたか」
ビールのおかわりがきて、神谷がごくごくとジョッキを傾けて飲んだあと、サラッとそう言った。新太は思わずムッとした表情を浮かべてしまう。
「まだ振られてません」
"側にいちゃいけない”というさくらの言葉には、新太を拒否している気持ちも含まれているように聞こえた。
司がさくらを連れて行ってしまうのをなすすべもなく、見つめているだけの自分が不甲斐なかった。けれどああ言われてしまったら、どうしていいかわからない。新太の表情をみて、神谷が苦笑する。
「その顔、ほぼ振られたな」
呑気にビールを煽る神谷に腹が立つ。怒りを抑えるために新太はそっぽを向く。
「まあ我が弟よ、ちょっと話を聞け」
普段よりテンションの高い、神谷の少しふざけた言い方は、新太のささくれだった神経をいよいよ逆撫でする。
「酔っぱらいがうるせんだよ。クソジジイ」
思わずイライラに乗じて小さく呟く。けれど間違いなくそれは神谷の耳に届いて、彼はビールジョッキをたん、と音をたててテーブルに叩きつけた。
「辛気くせえ顔して負のオーラ、撒き散らしてんじゃねえよ! いいから黙って聞けってんだよ、このくそガキが!」
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