第三章 彼の個人的活動

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「そんなことをいわれたの、初めてかもしれない。ていうかさくらさん、俺がやっていること、何かは知らないんですよね?」 「もちろん知らない。だから聞いているんだもの」  そういって笑うと、新太も小さく微笑んで肩をすくめた。それからすこしだけ何か考えるように視線を彷徨わせた後、ゆっくり口を開いた。 「秘密です」 「えーーーーーー。気になる!」  そんなさくらをみて新太は楽しそうに微笑んだ。 「もうちょっと強くなったら教えます。まだ中途半端なんですよ、俺」  新太の瞳から、本気でそう思っていること伝わってきて、さすがにこれ以上は追及できないことを感じたさくらが小さなため息をついた、その時だった。 「さくら? 朝からカフェテリアにいるなんて珍しい」  後ろから声をかけられてふりかえる。ゼミが一緒でさくらの同級生、三井司だった。司は濃紺のスーツにネクタイを締めている。 「あ、おはよ。三井くんこそ。今日は会社説明会?」  司のしめているストライプ柄のネクタイみつめつつ、さくらが訊ねる。 「リクルーターと午後からあうんだよ。その前にちょっと学校に寄った」 「商社だったっけ?」 「第一志望はね。さくらは銀行だったよな?」 「うん。基本銀行だけど、金融全般ね」  そんな話をしていたら隣で立ち上がる気配がした。新太はもう背中にリュック背負っていた。 「俺、もういきます」 「えっ? そうなの? 引き止めてごめんね。来週また授業で会おうね」 「はい。それじゃ」  新太はさくらに向かって軽く頭を下げると、速足でその場からいなくなってしまった。司は新太の後ろ姿を眺めたあと、さくらの隣の席にどさりとすわる。
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