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売り言葉に買い言葉。神谷が怒鳴ってまた、その場をしーんとさせる。
大介さんも新太もいい加減にしてよと、まわりのゲーマー達からため息まじりで言われ、わりいわりいと神谷が苦笑して手をあげて謝る。それからちょっと真面目な表情になって新太をみた。
「俺にも本気で好きになった女いたんだ。昔な」
「え?」
神谷の顔をみる。少し赤いものの、芯から酔っぱらっているわけではなさそうだった。
「その話、初めて聞きます」
「まわりに言ったことねえもん。本邦初公開。だから心して聞けよ?」
そういって神谷は目尻にちょっとしわを寄せて笑った。
「今から十年も前になるのかな。俺、スーパーで働いてたって話、してたっけ?」
「それは聞いたこと、あります」
そう答えた新太に神谷が頷く。
「高卒で入社して、五年目だったかな。短大卒の女の子が事務ではいってきたんだよ。里奈っていうんだけどさ。一目みたとたん、すげえかわいいって思ったら止まらなくなって、目が勝手に追いかけちゃってさ。新太じゃないけど一目惚れだよ。とにかく俺から押しまくって、つき合うようになったんだ」
昔を思い出すように目を細めた。
「丁度そのころ、ゲーマー一本で生きていくかどうか、悩んでいた時期だったんだ。アメリカの大会で初めて優勝したとき、今も支えてくれてる会社がスポンサードを申し出てくれて。
勤務時間不規則なスーパーで働いて合間にゲームして、デートして、なんて、もう絶対的に時間が足りないじゃん。スポンサーがつけば仕事やめてゲーム一本に没頭できるからな」
「まあ、そうですよね」
新太が神妙に頷くと神谷はまたビールを煽る。
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