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「それって、なかなかできないですよね」
新太が本気でそういうと、神谷は嬉しそうに頷いた。
「本当にいい女だった。かわいくて、芯は強くて、優しくて。あ、怒ると怖かったけど」
神谷は照れたように笑う。その笑顔も力が抜けていて、彼女のことが本当に好きだったことが伝わってくる。
「俺も火がついた。この状況からはいあがってやる。そう決意して一日十時間くらい部屋にこもってゲームばっかやってさ。ま、トレーニングなんだけど、傍からみたら単なる引きこもりだよな。
外にでても、スポンサー探しだのゲームイベント仕掛けたりで、ほとんど里奈を構ってやれなかった。けど俺なりにあいつを気遣ったり、コミュニケーションはとっているつもりだった。俺は俺であいつと一緒に生きていくために必死だったんだよ」
神谷は、過去を反芻するように目を細めた。
「そうやって一年ぐらいやって、すこしずつプロとしてやっていけそうな手応えを感じ始めた頃。里奈が家から出ていってしまったんだ」
神谷はまたビールを煽ってから、ちょっと深刻になった空気を軽くするように笑った。
「すげえショックだった。何度もあいつんちに行って説得しようとしたけど、まず親があいつに会わせてくれない。
あっちからみたら、俺、里奈のヒモだよな。その塩対応みて、里奈は親からの俺と別れろってプレッシャーにも耐えていたんだって初めて気づいた。気づくのが色々遅すぎたんだよ。
必死で何度も彼女の携帯に電話したよ。着信拒否されないことを祈りながらね。何十回も電話して、ようやく話せたとき言われたんだ」
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