第十八章 ただひたむきに

2/18

250人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
 月曜一限。以前は新太に会えるのが嬉しくて、楽しみにしていた授業。それが行きたくないと思う日がくるなんてさくらは、想像もしていなかった。  学校へ向かう足取りは重い。目もまだ少し腫れぼったい。新太と会いたくなかった。いや、会いたくない、というより会うのが怖かった。大きくため息をつく。  イベントを見に行ったあと、新太からの連絡はない。それはそうだろうと思う。あんなにも酷い言葉を彼にぶつけてしまったのだから。 『私は……新太くんの側にいちゃいけないんだって』  追いかけてきた新太にそういった時の、彼の表情は忘れられない。  茫然としたあと、ゆっくりと苦しそうに歪められていったあの顔。  新太は必死でさくらと話そうとしていた。彼に非はない。けれど話を聞く余裕すらなかった。もう側にはいられない。そう思うと苦しくて、顔をみていられなかった。  新太と神谷の対戦を思い出す。結局新太は負けてしまったけれど、ゲーマーとしての人並み外れた才能をさくらは目の当たりにした。  最初、大きなビジョンに映し出される対戦画面をみていても、何が行われていて、何がすごいのかピンとこなかった。目の前にいる神谷も新太もポーカーフェイスで、大きなアクションもなく淡々とコントローラーを操作しているだけなのだから。  司が解説してくれてはじめて、コンマ何秒という時間のなか、神業のような高度なテクニックの応酬が繰り広げられていることを知った。衝撃だった。どうやったらそんなことができるのか、見当もつかなかった。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加