第十八章 ただひたむきに

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 武蔵小山駅で降りて、賑やかなアーケード街を進む。駅前はスッキリした駅舎、立ち並ぶビルなど一般的な東京の町だ。けれどぎっしりお店がつまった賑やかなアーケード街の雰囲気、路地の先に見える古い家と新しい家が混在した町並みは、どこか庶民的で下町情緒も漂う。  新太はこの街で育った。さくらは興味深げにまわりの風景をみつめる。 「あ、このゲーセン、子供のころ、よく来てたんだ」  新太が指差したのは、いかにも町にある小さなゲームセンターだ。 「小さかったからオヤジと兄貴と来てたんだけど、俺だけハマっちゃって。泣いてもっとやらせろって騒いだって話を、今も延々とオヤジにされる」  新太が苦笑する。泣いて騒ぐ気の強そうな新太の子供時代がすぐに目に浮かんだ。さくらは思わず微笑んだ。   「なんとなく、想像できる」   「そこは、今の新太くんからは想像できないっていうところだから」  わざと拗ねてみせた新太につい、くすりと笑いがこぼれてしまった。新太が目を細めてさくらをみつめる。 「よかった」 「え?」 「今日初めてさくらさんが笑った」  立ち止まると、新太は繋いでいないほうの手を伸ばして、ゆっくりとさくらの髪の毛を優しく撫でた。その手触りに、さくらも猫のように無意識に目を細めてしまう。 「やっぱり、笑っているさくらさんがいい」  そういって、さくらの髪の毛にさりげなく唇を寄せた新太をみて、頬が一気に熱くなる。   アーケード街を抜けて、しばらく路地を進んでいったところの一角にある建物を新太が指差した。 「ついた。ここがウチ」
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