250人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
まだ新しいコンクリート造りの3階建ての建物で、一階部分は山谷小児科クリニックと看板にかいてある。
「ここが新太くんのおうち?」
「そう。親が二人とも小児科医なんだっていわなかったっけ?」
「うん。知らなかった」
打ちっぱなしコンクリート造りでありながら、殺風景にならないよう、ところどころに木枠がはめ込まれた洒落た雰囲気の建物だ。
「ステキなお家ね」
「以前は超ボロボロの古い木造家屋だったんだけど、大きな地震が来たら絶対ヤバいって四年前に建て替えたから。一階がクリニックで、上が住居になってる」
新太は裏口に回って、インターフォンを鳴らした。
『はーい』
スピーカーから男の子の元気な声が響いてくる。
「げっ! 何で聡太が月曜日の昼間に家にいんだよ!」
新太が顔をしかめてぶつぶついうと、新太? ナイスタイミング! インターフォンの向こうからそう叫ぶ声が響いたあと、ぶつっと音が切れた。新太はため息をついた。
「すいません。なぜか弟の聡太がいたから騒がしいかもしれないけど、さくっとスルーして気にしないでください」
「スルーって……」
さくらが困って苦笑すると、すぐにドタバタとドアの向こうから走ってくる音がして、がちゃりとドアがあいた。
顔を覗かせた男の子は、さくらの弟、哲人と同じくらいの年に見えた。切れ長の瞳をしていて、顔立ちの趣は新太とはかなりちがっているけれど、ふわふわな髪の毛と、顔が小さくて手足が長い立ち姿はよく似ている。
「新太! ちょうどよかった。今日体育祭の振替休日で、友達とストⅤプレイしててさ、新太ちょっとでいいから一緒に……あれ?」
最初のコメントを投稿しよう!