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聡太の顔がパアッと明るくなって、さくらの両手を握りしめ、ブンブンと振った。
「さくらさん、ありがとうございます!」
新太が、聡太の手をパンと払いのけた。
「気安くさくらさんに触んな、名前を呼ぶな」
聡太はマジマジと新太の顔をみてため息をついた。
「新太さあ、独占欲強い男って嫌われるよ?」
今、最もデリケートな部分を刺激するその言葉に、新太は一瞬フリーズしたあと、聡太を鬼の形相で睨んだ。
「うわ、怖えー。とにかく、さくらさんもどうぞ入ってください。ちょっとだけ新太借りますね?」
「一回だけだぞ。終わったらすぐ行くからな」
諦めたようにため息をつきながら新太がそういったのを聞いて、さくらは笑ってしまう。なんだかんだいって新太も弟がかわいいのだ。
「さくらさん、ごめん。早く終わらせるから」
新太がすまなそうにさくらに小声で囁く。耳ざとくその声をキャッチした聡太が叫んだ。
「やべぇ、新太が妙に優しい! そんな声初めて聞いた!」
「お前、マジで黙れ!」
キッと聡太を睨んで一喝する新太をみて、
さくらはとうとう我慢ができなくなって、吹き出してしまった。
広い玄関から二階につながる階段をあがると、広々としたリビングダイニングが一面にどーん、と広がっていた。天井も高い。大きな窓からは、花が植えられた中庭のグリーンが映えてよく見える。とても気持ちの良い空間だった。
テレビの前に聡太の同級生らしい男の子が二人いて、部屋にはいると、新太をとり囲んでなにか質問攻めしている。
「わあ、広い」
さくらがそう呟くと、聡太がすぐにそれに答えた。
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