第十八章 ただひたむきに

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「前の古い家は、部屋ばかり細々あって使いづらいって愚痴ってた母親が、ここ作るとき、このフロア全部まとめてひと部屋にしちゃったんですよ。  広々していて、いいっちゃ、いいんですけど、夏は冷房効きにくくて、冬は暖まりにくいんです。それに結局、みんなテレビ前の狭い場所に集まっちゃうし。広いのも考えもんです」  一人前の大人みたいな解説をしてくれた聡太の顔をみる。あまり人見知りしないタチらしい。 「ご両親に挨拶もしないであがりこんでしまって良かったのかな」  聡太は笑いながら首を振った。 「いま、診療中だから挨拶なんてムリだし、そもそもうち、いつも親に断らず友達が出入りしているんです。だから全然気にしないで大丈夫ですよ? 気になるなら俺、親にいっときますから心配しないでください」  テキパキとグラスに氷をいれカルピスを作ると、さくらに椅子をすすめて、目の前のテーブルの上においてくれた。ストローも用意して、グラスの下にはちゃんとコースターも敷いてある。  この年代特有の照れがまるでないし、飲み物を用意する手際のよさ、気が利くのにもびっくりする。弟の哲人だったらこうはいかない。両親が共働きで、上に兄二人の末っ子は、自立しているのかもしれないとさくらは感心する。      「お友達がよくくるってことは学校はおうちから近いの?」 「あー、A高校なんで、近いほうですね」  聡太は都内屈指の名門男子校の名前をあげた。 「頭いいんだね、A高なんて凄い」  さくらがそういうと、聡太は苦笑いする。
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