第十八章 ただひたむきに

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「中学受験で入ったんですけど、毎日塾いかされて、帰って来たら母親が横にへばりついて鬼の形相で復習させられるんですよ?  『鬼ババア 我が子の中学受験を成功へ導く地獄の特訓メソッド』って本に書いたら売れるんじゃないかってくらい、相当強烈にしごかれましたから。アレ毎日やったら誰でも受かります」  真顔でそんなことをいうから、思わずさくらは吹き出してしまった。新太とはまるで性格がちがう。次から次へと繰りだされる聡太のマシンガントークはさらに続く。 「でも、その地獄のメソッドも新太には全然効きませんでしたけどね。  上の兄貴、太一も母親にしごかれて、俺と同じA校に中学から入ったんですけど、新太だけは頑として勉強しなかったんですよ。怒り狂った母親と取っ組み合いしようが、どんなに叱られようが、塾さぼってゲーセンにいっちゃう。    勉強しないなら出てけって、新太が夜に家を閉め出されたことがあったんですよ。奴は泣きもせず、隣家の納屋に忍び込んでDSでゲームして、しまいにはそこで寝ちゃったんです。    いつまでたっても許しを乞う気配がないから、母親が痺れを切らしてドアあけたらどこにもいない。新太がいなくなったって大騒ぎですよ。警察にまで届けたんですから。  まあ、そんなこんなで母親が新太に根負けして塾をやめさせたとき、ある意味新太を尊敬しましたね。    太一と俺は、母親と正面切って戦う理由もなかったし、勉強するほうが母親もうるさくないからって、言うことを聞いていたけど、新太は断固拒否で正面突破して自分の意志を貫いた。こいつ半端ない根性の持ち主だって子供ながら思いましたよ」
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