第十八章 ただひたむきに

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 聡太の話は講談師のように淀みなく、母親に対峙している小学生の新太が目に見えるようだった。さくらは聡太の高校生離れしたしゃべりっぷりに驚くと同時に、新太は小さいときから、やっぱり新太なのだと口元が緩んだ。      「聡太くん、話すのがうまいね? 本当に高校生?」  からかうようにそういうと、ようやく年相応にはにかんだ笑顔をみせた。 「俺、昔からこうなんです。上の兄貴、二人ともろくにしゃべらないぶん、俺がしゃべりまくる構図になっちゃうんですよね。聡太黙れって、いわれながら育ってきたようなもんです。だけどしゃべるなって言われると、余計しゃべりたくなるのが人情ってものじゃないですか」  ひとつ聞くと十返ってくる。さくらはクスクス笑ってしまう。 「人情って……。聡太くん、落語研究会とかに入ってる?」 「あー、落研何度も誘われたけど、俺、格ゲー研究会主宰しているんで断ってます」 「格ゲー研究会?!」  次から次へと驚くような話題でてきて、話がとまらなくなる。こんなに話しやすい男子高校生なんて滅多にいない。聡太も嬉しそうに頷く。 「俺も新太にくっついて、格ゲーはそれなりにやりこんだし、なにしろ兄貴がプロゲーマーですからね。俺が研究会をたちあげるしかないじゃないですか。    うちの学校近くに有名なゲーセンがあって、プロゲーマーになった卒業生もいるくらいなんで、格ゲー好き、結構いるんです。あいつらも格ゲー研究会メンバーです。あと五人くらいいて、そいつらは午後うちにくる予定なんですけど、新太が来るなら全員午前中にこさせりゃ良かった」
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