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急に黙った聡太を覗きこむと、彼は子供みたいにすねた表情を浮かべて口を尖らせた。
「いいなあ、新太。さくらさんみたいな人とつきあえて。あいつばっかり、ずるい!」
突然そんなことを言われ、さくらはびっくりしてしまう。
「や、やだなあ。何を言ってるの」
ぶんぶんと手をふると、聡太はイヤイヤと首を振った。
「さくらさん、最初は近寄りがたいクールな美人にみえたけど、笑うとめちゃくちゃかわいいし、優しいし。新太が完全ロックオンしちゃっているのも、よくわかります」
「聡太くん、ほめすぎ……え? ロックオンって何?」
聡太がニヤリと微笑む。
「いったんハマったら、まわりが引くほど、とことんのめり込む。もう誰にも止められない。家族内では新太のソレ、ロックオンって呼んでいるんですよ」
さくらは首を振ってぎこちなく笑う。
「……そんなこと、ないよ」
新太がそこまで想ってくれているのかどうかなんて、さくらにはわからない。力なくそう言ってみたけれど、聡太には通じていない。
「あ、ロックオンなんて、いきなり言われたら怖いですよね、表現的に」
違うほうに解釈したらしく、気遣うようにさくらを覗き込んだ。顔はあまり似ていないのに、心配そうに眉を寄せる感じが新太とそっくりだった。さくらが思わず微笑むと、安心したように聡太が頷いた。
「新太なんてそもそもゲーム一筋で、大学にはいるまで、女の子に全く見向きもしなかったんですよ。あいつ、無駄にアイドルみたいな顔してるじゃないですか。ずっと共学だったし、バレンタインとか女の子が家までチョコをもってきたりしたんですよ!」
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