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手慣れた様子でリモコンのスイッチを押して車庫の自動シャッターを開ける。暗い空間にゆっくりと光が入ってきて、さくらは思わず目を細めた。車は滑らかに動き出し、狭い路地も器用に走り抜けていく。新太の言うとおり、彼の運転は危なげがなく、余裕さえあった。
「運転、うまいね」
ペーパードライバーのさくらが感心してそういうと、新太は笑った。
「ゲーム操作と似ているからかな。好きなんです、運転」
そういってハンドルを軽く指で叩いてみせた。運転する新太は力が抜けていてリラックスしている。まだ免許をとって一年もたたない初心者とは思えない。
運転する横顔を見ていると、やっぱり格好のいい男の子だとさくらは思う。最初は見た目のかわいさに目を惹かれる。けれど内面を知れば知るほど、芯の強さ、男らしいタフな印象が勝る。
このまま一緒にいられたら。ふとそんな思いに駆られ、吐息をつく。まだこの穏やかな時間のなかにいたくて、さくらは口を開く。
「あ、聡太くん、喜んでいたね。新太くんが文化祭に出てくれることになって」
新太がさくらも一緒にくるなら、と条件付きで講演会を引き受けた時、聡太は文字どおり狂喜乱舞した。
さくらさんありがとう! そういってさくらの手を取って変なダンスを始めたから、あまりの喜びようにさくらは思わず吹き出してしまっていた。お前、馴れ馴れしいんだよ! と新太に蹴られても聡太は上機嫌だった。
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