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知らないうちにさくらの目から涙が溢れでていた。真摯な光を宿した瞳で、飾ることも臆することもなく、ひたすらまっすぐさくらを求め、一緒にいたいといってくれる新太の言葉。
それらは知らないうちにさくらの心を震わせ、滴になって頬をすべり落ちていく。新太は親指でその涙をぬぐうと、耳元でそっと囁いた。
「抱きしめてもいい?」
生真面目に尋ねてくる新太がなんだかおかしくて、泣き笑いしながら小さく頷く。
新太はひどく慎重に腕を伸ばしてきて、ゆっくりと噛み締めるようにさくらを抱きしめた。新太の腕の中は暖かった。さくらも無意識のうちに彼の背中に腕をまわす。
彼のぬくもりを感じながら思う。この年下の恋人は、これからもこうやって、さくらをまるごと抱きしめてくれるのだろう。三つも年が下とは思えない強引さと優しさをもって。
「やっと捕まえた。もう逃げないで。心臓に悪すぎる」
顔をあげると、新太が拗ねたようにさくらを見ている。
「逃げたんじゃなくてあれは……。」
新太は片方の眉毛をあげて、少し意地悪な笑みを浮かべた。
「どちらにしたってもう逃がさないけど。俺、本当にしつこいから。一旦本気になったら、とことんまでのめり込むし、諦めないし。ちょっと癪に障るけど、うちのバカ弟が言ってたとおりだから」
聡太のことを思い出すとふたりの間に勝手に笑いがこみあげてくる。
「ロックオン?」
「そう。ロックオン」
額と額をこつんと合わせて笑いあう。互いの唇が近づいていく。ごく自然にすいよせられるように、ゆっくり重り合うと、次第に激しく求めあっていった。
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