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それが新太と自分との差なのかもしれないとも苦く思う。一年もの間、たださくらを見つめ機会を伺っていた司と、一気にアクションを起こしてさくらを手に入れ、なにか問題が起これば全力で修正してくる新太の差、だ。
ただ新太よりも長くさくらのことを見てきたという自負が司にはある。現状は新太より、さくらのことはわかっているつもりだ。ただこのアドバンテージもそう長くは続かないことも知っている。
(最後の悪あがき、かな)
司は笑いを納めたあと、さくらに向き直った。
「あいつ、本気だな。さくらと別れるつもりなんて毛頭ないね」
さくらは柔らかな表情で微笑む。その笑みに二人がより強く結び付いたことを確信し、まっすぐ彼女を見る。
「このまま付き合っていくにしても、あいつはともかく、さくらは相当な覚悟がいると思うよ。大丈夫?」
「覚悟?」
さくらが瞳を見開く。
「そう、覚悟」
咀嚼するようにもう一度繰り返した。これから話すことは、間違いなく今後さくらが直面することだ。それをちゃんとわかっているのか、確かめたかった。
「これからesportsが注目を集めれば集めるほど、あいつは表舞台に引っ張りだされる。望む、望まないに関わらずにね。
あいつのスポンサーもARATAの知名度がもっと高くなることを望むだろうし、あのルックスで、格ゲーマーとしては若くて実力もあるから、業界の広告塔としては最適だからね。そういう男の傍にいるって言う覚悟」
さくらはゆっくりと頷いた。
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