第二十章 覚悟

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「それともうひとつ。注目を集める一方で、プロゲーマーはまだ新しい職業だし、ゲームは子供の遊び、しかも害悪だという偏見も根強くある。スポーツの一種だっていう認識が、まだまだ日本では根付いていないからね。  プロゲーマーの価値を理解できない人たちはたくさんいる。プロゲーマーと一緒にいるっていうことは、さくらもその偏見に巻き込まれるってこと」  ひとつ息を吐いてさくらを見る。彼女はいつものように静かに話を聞いている。 「あいつも、さくらを全力で守りにはくるだろうけど、さくらも守られるだけじゃなく、本気であいつを選ぶ覚悟が必要だと俺は思う。まあすぐ別れるなら、そんな心配する必要ないけど、あいつがさくらを簡単に手放すなんて思えないしね」  司は自分で言っていて笑ってしまう。矛盾しているようだけど、頭のどこかでそれをわかっていた。わかってはいてもさくらを諦めたくなかった。 「ありがとう、三井くん」  さくらはまっすぐに司をみた。その瞳は何かを吹っ切ったように清々しい。 「私、父にね、新太くんとつきあっているっていったの。世界大会に出る新太くんを見に、ラスベガスに行きたいって話の流れで。だけど、彼がプロゲーマーで、卒業してもプロとしてやっていくらしいって言ったら顔色が変わって。ラスベガス行きはもちろん、新太くんと付き合うことも凄い勢いで反対されちゃった」  他人事のように穏やかに笑うその表情に、さくらの強い意思を感じた。 「親父さん、バリバリの銀行マンだろ? プロゲーマーなんて理解不能だろうな。そりゃ反対するわ」  あえて軽い調子で応じるとさくらも苦笑して頷いた。
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