第二十章 覚悟

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「父に今まで反抗しようなんて思ったことなかったの。父をみて、私も銀行を志望したくらいだし。でもね。プロゲーマーとしての新太くんを否定されて、無意識のうちに父に無我夢中で反論していたの。アスリート並の凄い努力をしているにどうしてって。    今はまだ、理解されないのは仕方ないのかもしれない。それでもね。わかって貰えても貰えなくても、これから父と、家族と、生きていく道は別れていくんだろうなあって思ったら切なくなっちゃって。それなら、できれば理解してもらいたいなってすごく思ったの。難しいけどね」  どこか遠いところを見つめて呟いた。さくらはもう新太と一緒にいる覚悟を決めている。尊敬してきた父親でもそれは動かせないのだ。 「そっか」  苦笑まじりでそう呟くと、さくらが困ったようにほほえんだ。 「ごめんね、こんな話をしちゃって」  以前のクールで凛とした雰囲気も魅力的だったけれど、今纏っている空気は柔らかで優しく、そして芯の強さがにじみ出るようで、さらに綺麗になったと思う。そんな風にさくらを変えたのは新太だ。悔しさを苦笑に滲ませる。 「本当に妬けるな、あいつには。ちょっと授業が一緒なくらいで、一年の癖にいきなりさくらをかっさらっていくとかさ。さくらだって、俺にしとけばよかったのに。そうしたら親父さんと揉めなくてすんだだろ。余計な気苦労をしなくてよかったじゃん」
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