第二十章 覚悟

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 ほぼ本音を冗談口調にくるめて嘆息してみせると、さくらがくすくす笑う。その笑顔も以前よりずっと親しみやすくてかわいらしい。  胸の奥で感じた疼きを、ため息と一緒に逃がそうと視線を外に向ける。見覚えのある姿がガラスドアの向こうにみえた。こちらに気づいたらしく、凄い勢いで走ってくる。さくらは背を向けているから、その様子に気づいていない  (やれやれ。王子様の登場か)  司の口元にいたずらっぽい笑みが浮かぶ。さくらの髪の毛を軽くなでるふりをしつつ、遠くからみたらキスをしているような仕草をわざとした。 「三井くん? 何やってるの?」  さくらが急に顔を近づけてきた司をきょとんと見上げたから、片方の眉をあげてにやりと笑ってみせた。 「あいつへ最後の嫌がらせ」 「え?」  図書館の自動ドアが開いて、新太がすごい形相で飛び込んできたのをみた瞬間、司は我慢できずに吹きだした。 「何やってんだよ!」  新太はそういって後ろからさくらの腕をぎゅっと捕まえ、自分のほうに引き寄せた。 「あ、新太くん?! びっくりした。声、大きいよ。どうしたの?!」 「どうしたのって、こいつ、今さくらさんに……」 「こいつって……俺一応、先輩。相変わらず口のききかたがなってないな、アラタくん。それと。お前の大事なお姫様にキスなんかしていません。さくらがそんなこと、させるわけないだろ? それともさくらのこと信用してないわけ?」  笑いを噛み殺しながらそういうと、新太はぐっと言葉を飲み込んだ。やっぱりこいつムカつく、と司を睨みながら、ぼそりと呟くから、笑いが止まらなくなる。
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