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「さすがのアラタくんも、さくらのことになると、クールじゃなくなるんだよな」
「……あんたが煽るからだろ」
「悔しいから、からかってウサを晴らしてんの」
新太はちょっと顔をあげ、様子を伺うように司をみた。笑いをおさめてから、肩を押して新太にだけ聞こえるように呟く。
「さくらの親父さん、お前とさくらが付き合っているの、反対してるぞ」
新太は警戒するようにぎゅっと司を睨むけれど、構うことなく言葉を続ける。
「来春ラスベガスでやるEVCに出るんだろ。あの世界で一番でかい大会で神谷に勝ってさっさと優勝しろ。まずそれ取ってから親父さんと渡りあえ。ゲーマーに理解がなくても世界一、ときいたら印象はだいぶ違うからな。突破口になる」
新太が大きく瞳を見開いて、なんでそんなこと、とぼそりと呟く。
「板挟みになるさくらが可哀想だろ。間違いなくお前を取るにしても、親父さんのことも大事に思っているんだから」
新太がはっとしたように司をみた。目が合ってふっと口元に笑みを浮かべてみせた。
「なにを話しているの?」
さくらがひょっと二人の間に不思議そうに顔をだす。司が笑いながら首をふる。
「今、アラタくんに告白してた。好きですって」
さくらが瞳を大きく見開いて叫んだ。
「ええっ?!」
「さくら、声でかい」
しぃーと人差し指をたててからかうように笑ってみせる。それからまっすぐ新太をみつめた。
「俺、マジでお前のプレイスタイル好きだぜ。基本クールで、緻密に練られた戦い方するくせに、ここぞって時にめちゃくちゃ熱くなって大胆になるところ、とかね。お前が表舞台にでてきた時から、神谷の次にくるのはARATAだって思ってた」
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