第二十章 覚悟

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 新太も司の心まで見通そうとするようにじっと見つめる。それに応えるように力をこめて言う。  「だから、今度のEVCは絶対取れ!」    新太が小さく息を吸いこんだ。短いフレーズ。けれど司が言外にこめた意味を、新太がまちがいなく受け止めたのを感じた。  聞くべきことは聞いたし、言うべきことも言った。これ以上二人の側にいても仕方ないと司は小さな笑みを浮かべた。   「言いたかったのはそれだけ。じゃ、俺行くわ。またな」  そういって二人にくるりと背を向けて手を上げる。 「三井さん!」  後ろから新太に声をかけられて振り返る。 「俺、勝ちますから」  新太の表情は、見慣れた反抗的なものではなかった。まっすぐで真摯な性格を映す大きな瞳。才がある人間特有の、強い意思を感じさせる光を帯びている。  この男だからさくらは惚れた。司はようやく納得できた気がした。 (男でも惚れそうだしな)  司は小さく苦く笑う。 「ああ、ネット中継みて応援してるから。絶対に勝てよ」  新太も口元を和らげた。初めて心を許したような笑みだった。司も頷き、前を向いて図書館から出る。  長かった片想いが終わった。幕切れとしては悪くない。司は本心からそう思い、目を伏せる。  大学構内の小道を抜け、このあと授業がある校舎に向かう。外の空気は乾いていて、少し前に比べるとずいぶん涼しくなった。吹き抜ける風が心地いい。  いつの間にか黄色く色づきはじめた木々。顔をあげると、揺れる葉の間から青空が見えた。細くたなびいた白い雲が、秋特有のどこまでも青い空をこぼれた絵の具のようにゆっくり流れていく。
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