250人が本棚に入れています
本棚に追加
小学生の頃から不良と純粋なゲーマーとを敏感にかぎ分けて、巧みに魔の手をくぐり抜け、ひたすら腕を磨いた。そんなふうにして、新太は人生で必要なことは、学校ではなくゲーセンで学んだと思っている。だからこそ、たかがゲーム。そういわれると腹が立つ。
新太にとっては、持っているすべてをかけて打ち込めるのが格闘ゲームの世界だ。さまざまな駆け引き、予測、反射神経、経験値。すべてが噛み合ってこそ勝つことができる。
最高にスリリングな瞬間を得るために、寝る間も惜しんでコンマ何秒のタイミングを探ってコントローラーを叩きまくる日々。
高校生になっていよいよ格闘ゲームにのめりこみ、おおきな大会でも上位に食い込みはじめた新太を、両親が心配しないわけがない。
特に母親とはゲームばりのバトルを繰り広げた。大学なんていかないでプロゲーマー一本でいく。そう主張する新太と揉めに揉めた。
すったもんだの挙句、とりあえず大学をでたら、あとは何をしようと勝手にしていい。そこまで親の妥協を引き出した。
新太は 一度決めたら、やりとげなければ気が済まないタチだ。ゲーマーとしてのハードなトレーニングをしながら、定期テストの勉強もこなして付属エレベーターになんとか乗りきり、新太は親との約束どおりに大学への内部進学を果たした。
それでも家で朝から晩までゲームをしていたら、文句を言われるにきまっている。だから大学入学を機に、賞金などで得たお金を投入して、一人暮らしを始めることにした。
大学に入ったら目いっぱいゲームに集中できる。そう思っていたのに。
そこで、幸か不幸かさくらと出会ってしまった。
そのうえ、会えば会うほど、話せば話すほど、どんどん好きになってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!