第二十一章 ふたりで

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 飛行機、ホテルの予約も全部入れて背水の陣を敷き、今しかラスベガスに行くチャンスがないことを必死で訴え、全力で両親にプレゼンした。    旅行日程をきちんと作って示し、空港、ホテル、場所ごとに、それぞれ定期的にちゃんと連絡すること。多少高くついたけれど予約できたMホテルがそのまま大会会場だから、外にでる必要はないこと。大会観戦以外は基本部屋で卒論書きをすること。プレイヤーである新太には集中を乱すから、さくらがラスベガス行くことをいっていないし、大会が終わるまで会うつもりがないこと、などなど。  最初に陥落したのは母だった。滅多に我儘を言わないさくらが、ここまで情熱をみせたのに驚き、綿密な旅行計画内容にも理解をみせ、さくらがそこまで言うならと同意をしてくれた。  問題は父だった。まず話すら聞いてくれなかった。行く必要がないの一点張り。それでも諦めず何度も何度も掛け合った。どうしても折れてくれない父親に、最後は強硬突破するしかない、と諦めかけていた時。窮地を救ってくれたのは意外にも弟の哲人だった。  さくらと父親が押し問答をしている最中に間にはいってきて、彼は怒鳴った。 『親父さあ、ねえちゃん二十歳すぎてんだし、自分で金貯めていくんだから、好きにさせればいいだろ! 過保護だっての!   それにさ、俺、夜中に親父が母さんに話してんの聞こえたぜ。ゲーム好きの若い部下に、格ゲーのことリサーチしたんだろ? そしたらARATAさんが有名プロゲーマーで、次世代トップ最有力候補だって聞いたって」
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