第二十一章 ふたりで

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 Mホテルはとにかく広かった。水族館、ラスベガス一番の広さを誇るプール、大きなショッピングモールまである。大会会場は、巨大アリーナレベルの広さを誇る、コンベンションホールだという。  案内図をみながら、その規模の大きさを目の当たりにして、ため息がもれた。まるでちょっとした町のようだ。ただ人も沢山いるから、そこに紛れたら新太にみつかる心配はしなくてよさそうだった。  まっすぐ一直線の広い通路をコンベンションホールに向かって歩いていると、人だかりができているのが見えた。人種を問わず男たちが群がって輪になっている。  ついつい好奇心で、何があるのだろうとひょいと覗いてしまう。すると輪の中心には神谷がいて、サインや写真を求められていた。 (うっ。神谷さん!)  さくらはすぐに俯いてそのまま数歩さがり、立ち去ろうとした。神谷に見つかれば、新太にもさくらが来ていることがバレてしまう。  けれど神谷は目敏かった。輪の中からすぐに、ああっ! と叫ぶ声がして人垣をかき分け、飛び出してきた。 「やっぱりさくらちゃんだ! なんでここにいるの?」  格闘ゲーム界のスタープレイヤーである神谷に、この場所でそんなふうに大きな声で叫ばれたらたまらない。いきなりまわりから大注目を浴びてしまったさくらは、慌てて神谷の側に駆け寄った。
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