第二十一章 ふたりで

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「神谷さん、ご無沙汰してます。あ、あの、新太くんには私が来ていることは言わないで貰えますか? 黙って来てしまったから怒られちゃうし、集中を乱してしまうから」  声をひそめてそういうと、神谷がニヤリと笑った。 「えー? もしかしてまた、新太に黙ってきたの? こないだのエキジビションの時に来てたイケメンとラスベガスも一緒?」  楽しげなからかい口調。神谷は色々事情を知っている。さくらはそう直感して顔から火がでるくらい恥ずかしくなって、ぶんぶん首をふった。 「ま、まさか。私一人で来たんです。絶対一人でくるなって新太くんに言われていたから、こっそり見にきて、こっそり帰ろうと思っていて」    神谷が瞳を見開いた。 「ここまで一人?  若い女の子が一人で飛行機に乗ってラスベガス来て、無事に着いたら着いたで、今度はこんな男だらけの外国のホテルの中、うろうろするとか……。そりゃあ新太も心配して反対するよなあ」  神谷が瞳を細めて笑顔を残したまま、ため息まじりにそういうから、さくらも困ってしまう。 「スイマセン。心配かけちゃうから、新太くんには内緒で」  そういって両手を顔のまえで合わせて必死にお願いすると、神谷はうーん、と唸った。   「黙っていたら、また新太に怒られそうだしなあ。ほら、あのエキジビションマッチのあと、さくらちゃんがイケメンと新太に黙って帰っちゃったでしょ。  新太、史上最悪に機嫌が悪くなってさ。慰めようとしたら、うるせえんだよクソジジイってキレられたからね? いくら最大級に落ち込んでいるからって、ひとまわり以上年上の先輩に、クソジジイって八つ当たりするの、あり得なくない?」  さくらは何て言っていいかわからず、真っ赤になってスイマセンと小さく呟くしかない。いやいやあいつにムカついてるの、と神谷に笑われる。
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