第二十一章 ふたりで

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 ここまで勝ち進んできたセミファイナリスト四人のうち、それぞれの勝者ニ名が、翌日の最終日に行われる、グランドファイナル出場を手にする。   最初の組に神谷が登場した。伝説的な勝負をいくつも繰り広げてきたカリスマゲーマー神谷と地元アメリカ人ゲーマーの登場で会場はヒートアップする。  口笛をならし、足踏みをするまわりの熱狂。日本のゲームセンターでみたノリとはまた違う。まさにスポーツ観戦というオープンな雰囲気に、さくらは圧倒されてしまう。  対戦相手が、ホームである地の利を活かして舞台上で観客を煽って盛り上がる姿とは対照的に、神谷はポーカーフェイス。落ち着き払ってじっとモニターを見つめている。さきほどの神谷とは別人みたいにみえる。  プレイが始まると、彼らしい老獪さで相手を隅に追い詰め、そこから一気に技を炸裂させ、確実にKOを奪っていく。素人のさくらからみても、神谷の強さは圧倒的だった。それでも全く気を緩める様子はなく、勝ってグランドファイナル出場を決めた後、ようやくいつもの笑みを浮かべた。 (神谷さん、強い……。)  改めてその実力を目の当たりにして、さくらはもっていたバッグをぎゅっと握りしめる。新太にとって最大の難関はやはり神谷だと実感する。  次はいよいよ新太の出番だ。プレイヤー紹介のあと歓声が響くなか、黒いアーケードコントローラーを脇に抱えた新太が舞台上に姿を現した。  スポンサードされている企業のロゴが袖にはいった白いポロシャツにジーンズ。お気に入りのスニーカー。ふわふわな髪の毛。いつもの新太だ。さくらの胸は高鳴っていく。  ヘッドフォンをつけるその表情は相変わらず怖いくらいに集中している。けれど一瞬、口元が緩んでカーブを描いたのが見えた。 (あれ。新太くん笑った?)
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