第二十一章 ふたりで

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「一人でラスベガスなんて絶対ダメ! って言われても何度も何度も説得して、旅程表つくって、危険な所もいかないし毎日連絡も入れるって約束して、根気よく説得してやっと許してもらったの。私、こんなに粘ってなにかを親にお願いしたのって初めて」  話ながらさくらは思う。  無理してでもこの場にこれて本当に良かった。新太が人生をかけて取り組んでいる世界の頂点。大観衆のなかで堂々と戦い、勝利する新太をみて心が震えた。あの空気に触れ、熱気を共有できたのは、何物にも代えられない。まだ体が熱い。高揚していて話が止まらない。 「でも頑張って来てよかった。新太くん凄くかっこよかったよ! 落ち着いていてクールで。私のほうが心臓破れるかもってくらいドキドキして、興奮して周りの人と一緒に叫んでた。  明日もね、きっとまた私、叫んで応援してるよ。神谷さんとの対戦なんて、考えるだけで、いまからもうドキドキしちゃう。だからね、私は大丈夫。心配いらないからね。新太くんは、明日の決勝のことだけ考えて……」  さくらがそこまで話したところで、いきなり新太に強く抱き締められた。 「新太、くん?」  息が苦しくなるほどぎゅっと強く抱きしめられ、腕の中に閉じ込められた。身動きができないから顔もあげられない。新太の唇がさくらの耳に微かに触れたから、ぴくりと体を震えてしまう。 「わざわざこんな遠いところにまで来てくれて、本当にありがとう。よかった、さくらさんが無事に着いて。でももう無茶しないで。さくらさんに何かあったらオレ、死ぬ。マジで耐えられない」
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