第四章 恋情

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 彼には新太にはない、大人の余裕があった。しかもあの男はさくらと歳も一緒、真っ当な会社に就職しようとしてるのも一緒。世間一般が納得するような道をさくらと歩める立場にいる。  一方新太はプロゲーマーとして生きていく覚悟をきめている。それはもう新太のなかで揺るぎのない決定事項だ。  格闘ゲームはeスポーツの一種目として多少認知度があがったものの、まだまだゲームは遊びと軽んじられてもいるのも肌で感じている。  日本では規制があって、他国では普通に開催されている高額賞金をかけた大会があまりない。それもゲーマーがその道のプロフェッショナルとして認識されにくい原因のひとつだと思っている。  そんな状況に納得いかないし、新太もプレイヤーのひとりとして、なんとかしたいと感じている。そう思っているからこそ本気でやらないといけない。そもそも死ぬ気でレベルアップしていかないと、生き残ることすらできない。  そんな新太と彼らでは大学というおなじ場所にいても、将来目指す方向がまるで違う。さくらとあの男とではシェアできるものも、新太にはできない。その逆も然りだ。 (しかも俺、さくらさんより3つも年下だし)  見た目が幼なじみのケンのように大人びているならまだしも、ベビーフェイスの新太は、高校生といってもまったく違和感がない。さくらと並んだら、姉と弟にしかみえないだろう。さくらからしてみても、新太はたまたま授業が一緒になった、なついてくる弟みたいな感覚しかないのかもしれない。
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