第二十二章 未来を掴め

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 司は微笑んでいたけれど、目は真剣だった。彼の気持ちすべてが、あの言葉に集約されていた。今、この場面をネット中継でみているかもしれない。  (わかっているよ、三井さん。このラウンド、絶対落としたりしない。たとえどんなに大介さんが強くても)  身体の内側でたぎる熱を宥めるよう吐息をつく。ヘッドフォンをつけ直し、もう一度モニター上に意識を集中させ、自身が操るキャラクターとシンクロしていく。背中がぞくぞくするほどの興奮と、冷静であろうとする理性。どちらも最大級にシビアになるだろう最後の勝負を待ち望んでいる。新太は微笑む。  何も、怖くない。 『Final Round! Fight!』  場内アナウンスともに最終ラウンドが始まった。  体力ゲージを少しずつ削りあう探りあい。お互いに絶対に隙を見せない。そんな張りつめた空気の中、牽制がしばし続く。  硬直した空気を先に動かしたのは神谷だった。絶妙なタイミングで新太からの攻撃を振り切り、懐に飛び込んでくる。そこから連続技、そして超必殺技であるクリティカルアーツを一気に仕掛けてきた。  この大技は体力ゲージとは別にあるEXゲージを目一杯消費しないと使えない。もし外せば技をかけたほうがダメージが大きく、隙もできてしまう。ただし、まともにヒットすれば、相手の体力ゲージをがっつり削り、勝利への大きなアドバンテージになる。ハイリスクハイリターンの大技だ。  神谷のEXゲージがフルなのはわかっていたから、警戒していたにも関わらず、新太の防御よりもコンマ数秒、神谷の仕掛けのほうが早かった。その超必殺技をまともに食らい、新太側の体力ゲージは一気に減った。
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