第二十二章 未来を掴め

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 新太は一気に距離を詰めた。当然神谷のキャラクターはとどめを刺そうと襲いかかってくる。激しいパンチ、キック、飛び道具の応酬。新太はそのすべてを、正確なコマンド入力で次々とブロッキングしていく。一発でもまともに技を浴びたらKOされてしまう新太の体力ゲージ。そのドットは減らない。会場がどよめく。  観客たちの大歓声が、遠い場所から響いてくる地鳴りのように聞こえる。そう思えるほど、新太のまわりは静寂に包まれていた。異様なほどすべてがクリアだった。新太の目には、飛行機が着陸する時にみえる誘導灯のように、これからすべきことが、全部指し示されているように映った。  一フレーム、六十分の一秒というコマンド入力時間すら、長く感じる。そのスローモーションみたいな世界で、新太はゆっくりと神谷のキャラクターに近づいてゆく。  神谷側の動きもすべて見えた。これからどう動くか手に取るようにわかる。パンチを避けたあと、コンボコマンド入力へ。連続キックが神谷のキャラクターにがっつりヒットし大きなダメージを与えた。 (次!)  その手応えの余韻が消えないうちに、EXゲージを目一杯使って複雑なクリティカルアーツコマンドを一寸の狂いのないタイミングで叩き込む。  わずかな間のあと。  新太の使うキャラクターが画面いっぱいに登場してポーズをとった後、超必殺技が炸裂する。それが太い光の帯になって神谷のキャラクターに一気に突き刺さった。彼は大きくのけぞって、後ろに吹っ飛んで倒れた。画面に浮かび上がるKOの大きな文字。
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