第二十二章 未来を掴め

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「さくらさん、俺、勝った」  弾んだ息のまま囁く。さくらは新太の顔を数秒じっと見つめたあと、くしゃりと表情を崩して泣き顔になった。ぽろぽろと大粒の涙を零して何かを話そうとしているけれど、涙に邪魔されて言葉が中々でてこない。  新太がそっと頭を押さえて、自分の胸のなかにさくらの泣き顔を隠す。他の人間には見せたくなかった。 「ありがとう」  万感の想い、そのすべてをこめてさくらの耳元で囁くと、新太の胸に顔を埋めて嗚咽しながら、さくらは何度も頷いた。二人のまわりには幾重も人の輪ができて、拍手や祝福、歓声が飛び交う。  新太は腕のなかにいる愛しい人の、震える背中を何度も何度も優しく撫で続けた。
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