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「疲れた……」
Tシャツにスエットパンツ姿の新太が、ぼんやりした顔をして、ゲーム専用部屋からリビングに入ってきた。フワフワな髪の毛はくしゃくしゃ。メガネはちょっとズレていて、いつもは大きな瞳も半分くらいしか開いていない。
一方のさくらはタイトスカートにふんわりとしたシフォンのブラウス。そのうえに品のいいカーディガンを羽織り、メークもきちんとしてさわやかな出勤モードだ。朝食を食べていた手をとめて、新太のその、ボロボロな姿につい吹き出してしまう。
「徹夜したの?」
「うん。もう限界、目がチカチカしてきた」
新太はソファにどさりと腰掛けると、メガネを外してサイドテーブルの上に放りなげた。
「やべえ。頭もクラクラする」
朝の光に溶かされてしまったバターみたいに、ソファにだらりと倒れ込むように座った新太をみて苦笑した。
「一晩中ゲームかあ。ワタシはムリだな。頭、溶けちゃう」
「さくらさんには絶対オススメしないよ。体調もおかしくなるし、頭もぼんやりするし」
さくらは真面目な顔をして新太を覗きこむ。
「徹夜はもうやめよ? やっぱり体によくない。風邪もひくし」
そういえばと新太が笑う。
「三日連続徹夜でトレーニングしたら風邪をひいて、さくらさんに看病してもらったのが、付き合うきっかけだったよね。あれ十九の時だったよな。三日連続で徹夜とか俺も若かったなあ」
しみじみとそう言う新太にさくらはツッコミをいれざるを得ない。
「何を言っているの。まだ二十四のくせに。私に喧嘩を売っているの?」
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