エピローグ

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 怒ったふりでそういうと、新太がスイマセンと言ってとぼけた感じで笑う。 「夜中から朝方くらいまでの間が、強い奴がオンライン対戦に集まる時間帯だからつい、熱がはいっちゃって。でも昼間のパフォーマンス落ちるし、できるだけ徹夜はしないようにするよ。あー、眠いのに妙に意識だけは冴えてる」  そういっておっとり笑う新太は、どうみても可愛い。けれど”カワイイ”は彼にとってNGワードだから、さくらは言わないように気をつけている。それでも可愛いとは思ってしまうので、つい口元がほころんでしまう。そんなさくらを見て新太がなに? という顔をするから首を振った。    新太の見た目は以前と変わらず、どうみても二十歳そこそこくらいにしかみえない。青年、というよりは相変わらず少年みたいだ。  色素が薄いフワフワな茶色の髪の毛。様々な表情を映す大きな綺麗な瞳。余計な肉がまるでない、男の子らしいすっきりした立ち姿。  プロゲーマーという職業も、彼を余計若く見せているのかもしれない。  銀行に勤めるさくらは、年相応に年齢を重ねていて、ちょっと拗ねたくなる。けれどこればかりは仕方ない。  彼の中身もやっぱりあまり変わらない。意志が強くてストイック。少し強引なところとあるけれど、さくらをいつも気遣う優しさもある。なんといってもあのナチュラルな笑顔は、ひだまりみたいで、一緒にいるとぽかぽかとさくらの心の一番深い部分を包んで暖めてくれる。
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