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「新太くん!?」
「そ。プロゲーマーのARATAだよ」
服装はいつも着ているようなTシャツにジーンズ。けれど表情が普段の新太とはまるで違っていた。
鋭く厳しい眼差し。口はぎゅっと引き結ばれていて恐ろしく集中しているのが見てとれる。まさにこれから戦う男の顔。普段とのギャップにさくらは息をのんだ。
そこから映像はゲーム画面に切り替わる。リアルな動きをするキャラクターたちが戦いを繰り広げている。
どういう差があって、勝負がきまるのかさくらにはよくわからない。けれど最後、ARATAが操っていたキャラクターが相手に蹴りを決められ、宙を舞い、崩れ落ちたのはわかった。ゲームオーバー。
司がストップボタンを押した。
「去年はこのセミファイナルで、ARATA、負けちゃったんだよな。まあ相手は絶対的チャンプ神谷大介だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど、かなり僅差のいい勝負だったよ」
「新太くん、プロゲーマーだったんだ……」
さくらがぼそりとそう呟くと、司が頷いた。
「王者神谷を倒すのはARATAじゃないかって言われている。eスポーツとして、格ゲーがオリンピックに認められたらARATAは間違いなく代表に選ばれるだろな。まあ、そういうヤツだよ」
さくらの白い頬が微かに赤くなっている。普段あまり感情を表にださないさくらが、心を動かされているのを司は見逃さなかった。
「三井くん詳しいんだね」
それでもその口調はいつもどおり、落ち着いたものだった。
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