第五章 ARATA

5/7
前へ
/253ページ
次へ
「俺、なんだかんだ言ってもあいつのプレイスタイル、好きなんだよ。基本すごく冷静なんだけど、じわじわ集中力が増していって、一気に鋭い攻撃をしかける感じがね。  時々それがとんでもないゾーンに入るときがあるんだよ。絶対そんなコンボ、ああ連続技ね。やったら普通は自滅するっていうやつを、鮮やかにきめてみせて逆転勝ちとか。    あれはちょっと神がかっていて、みていてぞくぞくするんだよな。ああいうやつが、たぶん天才、なんだろうなって思ったりしてさ」    普段はシニカルな司が、新太のことを誉めたうえに熱く語っていることに、さくらは驚いたようだった。 「珍しいね。三井くんがべたぼめなんて」 「まあね。ああいうプレイって努力だけじゃできないって、わかるから。しかしさ、まさか同じ大学の後輩にあのARATAがいるなんて。しかもさくらと仲良しだし」  その言葉に、さくらがどこか照れたように、まばたきをした。 「……仲良しっていうほどじゃ、ないかな。授業がたまたま一緒になっただけだし、そんな有名ゲーマーなんて知らなかったし」 「ふーん」  ゼミで一緒になった一年前から、司はさくらのことが気になって、さりげなくアプローチしていた。けれどさくらはそんな司を、感じが悪くない程度にスルーし続けて、ゼミ仲間というスタンスを崩さない。  司の顔立ちは際立ったハンサムではないけれど和風サッパリ系、背も高いから見栄えするタイプだ。そして今どきの男子には珍しい押しの強さも持っていた。  だからいままで女の子に告白して断られることは滅多になかったし、断られても強気な攻めで、大抵は受け入れられてきた。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加