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大学から新太の住んでいるマンションまで、地下鉄にのる時間も含めドアtoドアで三十分。
いつもであればたいした時間もかからない。ましてや、さくらが一緒なら、浮かれてあっという間についてしまう距離だ。
けれど体調がじわじわ悪化してきた新太にとっては、駅まですらなかなかたどり着けない苦行の道のりになっていた。
そんな新太をみかねて、さくらはタクシーを拾った。タクシーなら一人で帰れますから。そういってみたけれど、さくらは心配だから、と笑ってとりあってくれなかった。
「さくらさんが来るとは思わないから、部屋のなか、ぐっちゃぐちゃなんですけど」
ごほごほ咳き込みながら、ようやくついた自宅マンションの鍵をあける。
(さくらさんが俺の部屋に来るなんて)
夢のような展開にも関わらず、体調が悪すぎてその喜びをしっかり味わえないもどかしさに、ため息がこぼれてしまう。
「そんなのいいから。早く着替えて寝ないと。それを見届けてからじゃないと私、帰らないよ?」
瞳は心配そうに細められているのに、さくらはわざと怒ったような声でそういう。
その言い方が、学級委員長をしている小学生みたいな正義感に溢れていて。普段は新太よりも大人で落ち着いているさくらが、年下の少女のようにかんじてしまい、つい口許が緩む。
そんなことを考えながら部屋のドアをあけた瞬間、新太は咳き込んでしまい、玄関にへたりこんでしまった。
「新太くん?! 大丈夫?」
ドアを閉めたあと、さくらもしゃがみこんで新太の背中に手をあてる。その優しい手触りが心地よくて深く息を吐く。
「だ、大丈夫です。家についたので安心して、ちょっと気が抜けました。少しやすんだら立ち上がります」
「うん。ゆっくりね」
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