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うつむき加減の視線の先に、しゃがみこんだせいで黒いタイトスカートが膝上まであがったさくらの腿があった。その距離が異様に近い。
いや、腿だけじゃない。さくらとの距離、すべてが近かった。
熱のせいもあるかもしれない。
いままであまり経験したことがない、身体の内側からせりあがってくる強い衝動を感じて、おかしなことを口走ってしまいそうで怖くなる。
(ヤバい。早くたちあがらないと……)
一人であせって勢いをつけて立ち上がろうとする。が、唐突なその動きを、熱に侵されている筋肉が支えきれるわけもなく、新太はふらっと傾いた。
「あ、あぶない!」
さくらもすぐにたちあがって、抱きとめる形で支えようとした。それでも新太の全体重を、細身のさくらが完全に支えきることはできず、そのままふたり重なりあって、ドアに向かって倒れこんだ。
よくわからないうちに、新太がさくらを“壁ドン“している体勢になってしまう。しかも新太は腕に力が入らないから、ふつうの壁ドンより明らかに密着している。
無意識に新太の喉が鳴ってしまう。その音に反応したように、さくらがビクリと身じろぎした。
一見華奢にみえるのにこうして触れてみると、さくらはとても柔らかった。新太自身も細身だったけれど、骨太な自分の身体とはまるで違う感触に、体温がさらに一度くらい、上がった気がした。
最初に口を開いたのはさくらだった。
「新太くん、大丈夫? 動ける?」
少し身体を離して、掠れた声でそういったさくらの顔をみた。困ったように眉を少し寄せたその表情。白い頬が微か上気している。
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