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新太がはっと目が覚めたときは、もう部屋の中が薄暗かった。手もとの目覚まし時計をみると、夕方六時を過ぎていた。
「あー、よく寝た」
だいぶ身体が軽くなったのがわかる。まだ多少熱はあるものの、要はひどい寝不足が原因で風邪をひいたのだ。
額に手を当てるとなにかが貼ってあった。剥がしてみると、熱をさますシートだった。サイドテーブルにはシート本体の箱もおいてあった。
「さくらさんが貼ってくれたんだ……」
クリアになった頭で、眠り込んでしまう前にあったことを思い出す。
朦朧としていた新太を、さくらが玄関からひきずるようにして寝室に運んでくれた。そのあとも心配だからしばらく付き添うといってくれたけれど、寝れば大丈夫だからと、帰ってもらうように何度もいった。会社説明会を控えているさくらをこれ以上ひきとめられない。
熱でぼんやりしていても、そのことはちゃんと頭にあったから繰り返し言ったはずだ。さくらの気配がないのは少し寂しかったけれど、説明会に行ってくれたようでほっとする。
(あれ? 寝落ちする前、もっと凄いことがあったような……)
新太はごくりと唾を飲み込んだ。さくらを抱き締めた感覚がじわじわよみがえってくる。自分の手のひらをみつめた。
(俺、もしかして……どさくさに紛れて、さくらさんに抱きついたうえに、告ってなかった?)
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