第六章 熱

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 ガバッと起き上がり、思わず頭を抱えてしまった。 「ヤバイ。やらかした……」  誰に言うでもなく呟いて、盛大にため息ついた。 「絶対ドン引きされた……」  でも、と混乱した頭で考える。あの告白をした後も、さくらは新太を気遣ってくれていた。 「もしかして。俺の告白を受け入れてくれた、とか?」  そう独り言を言った口元が緩みそうになる。けれど、すぐにイヤイヤイヤと首をふる。それにしてはさくらの様子が普通過ぎた。  考えられるのは、告白をさらっとスルーされたか、もしくは声が掠れていたから、聞こえていなかったか。  どちらにしても恐ろしく悩ましい。 「はあああ……」   盛大にまた、もうひとつため息をついたものの、とりあえず喉が猛烈に乾いていることに気づいて起き上がり、飲み物をとりに冷蔵庫に向かった。  新太の部屋は1LDKで学生が一人で住むには十分な広さがある。けれど寝室にしている部屋以外は、ゲーム関連機器やモニターなどが雑に置いてあるから、あまり広くは感じられない。  リビングにつながるドアを開けると、灯りがつけっぱなしだった。電気の消し忘れはいつもよくやるので、たいして気にもとめずキッチンにはいる。  冷蔵庫を開けると、買った覚えのないスポーツドリンクのペットボトルと栄養ドリンクがはいっていた。  それから野菜たっぷりスープとあつあつ肉うどんとタグ打ちされたふたつ容器。そこには近所にあるコンビニのマークがあった。 (さくらさんが買って置いてくれたのかな)  
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