第七章 あふれる想い

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 会社説明会にいってくれ、と何度もうわ言のように言っていたけれど、さくらは具合がわるそうな新太を、ひとり部屋にいく気になれなかった。迷わずキャンセルの連絡をした。    眠ってしまった新太の顔をみつめながら、玄関先でのことをおもいだす。  熱のせいなのか雰囲気がいつもと違っていた。気だるそうにうるんだ大きな瞳でじっと見つめられると、なんだか落ちつかなくなった。  ドアを背にして、新太を抱き抱える状態になったあの時。  身体の熱さ、そしてこちらにまで響いてくるような鼓動の早さに驚いた。そしてなによりもその距離の近さに緊張したけれど、さくらのほうが三歳も年上。平静を保って大丈夫かどうか声をかけた。  そうしたら。見た目からは想像できない力強さで腕のなかに閉じ込められた。男の強い力、だった。さくらの心臓は新太のものとシンクロするように早打ちしだして、息をするのも苦しくなってくる。  苦しいのに、いままで感じたことがない、痺れるような高揚感もさくらを包み込む。超至近距離で新太と目があった瞬間、息を呑む。いつもの穏やかに笑う、癒し系男子の目じゃなかったから。     動画でみた、真剣勝負を挑むARATAの瞳にちょっと似ていた。けれどそれとはまたどこか違う種類の熱を帯びた瞳。そんな新太はどこか色っぽくて、怖いくらい男を感じさせた。  背中が何かに感電したように震えてしまったけれど、怖かったから、じゃない。耳元で囁かれた言葉は、低く掠れていて、知らない男の人の声みたいだと思った。 『さくらさん、……好き』  切実さからくる、ちょっと尖った響きの声は、ダイレクトにさくらの心に刺さって響く。
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