第七章 あふれる想い

7/11
前へ
/253ページ
次へ
「行かないって決めたのは私。新太くんのせいじゃないよ? だからそれは本当に気にしないで」 「でも……」 「確かにご飯もたべないで三日連続で徹夜したら、風邪もひくよね。でもヤレっていわれても私なら絶対にできない。頑張っても一日でギブアップかな。それをやっちゃう情熱と体力がある新太くんってすごいと思うよ」 「さくらさん……」  新太はさくらをじっとみて、握っている手をさらに強く握ってきた。そのまましばらく黙っていたけれど、ゆっくり口を開いた 「俺、プロのゲーマーなんです。だから昼間学校にいっていたりすると夜しかトレーニングする時間がなくて……」 「うん、そうなんだってね」  あっさりさくらがそう頷くと、新太はびっくりしたように瞳を大きく見開いた。 「知っていたんですか? 俺がプロゲーマーだって」 「カフェテリアで会った私の同級生、いたでしょう、三井くん。彼、格闘ゲームが好きで、新太くんのことをよく知っていたから教えてもらったの。有名なゲーマーだって」 「いや俺、そんな有名なんかじゃないけど……」  新太はため息をついたあと、ちょっと上目遣いでさくらを見上げた。 「授業で会ったとき、どうして俺にそのことを、言ってくれなかったんですか? あの人から俺のこと聞いて知っていたのに」  すこし責めるような、拗ねたみたいな口調に、さくらは驚く。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加