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唇を噛み締めて新太は目を逸らした。呪縛がとけたようにようやく息が普通にできる感覚になって、俯いた新太をみつめる。
普段は人目を惹くようなかわいい男の子なのに、かわいさとはまるで違う部分を彼の中にみつけるたびに、心がざわめく。
強い意思をかんじさせる引き結んだ唇。勝負をしているときの冷徹なまでのクールな表情。熱を帯びてさくらをみつめる瞳。
それらがさくらの心をひどく揺らして、否応なしに新太に惹き付けられてしまう。
こんなふうに異性に対して感じるのは初めてだった。しかも三つも年下の男の子に。
さくらは意を決してゆっくり口を開いた。
「三井くんは………本気なのか、冗談なのか、よくわからないんだけど、確かにいつも口説いてきたりはするかな」
新太がびっくりしたように顔をあげた。目があってさくらは微笑んだ。
「でもね。私……好きなひと、いるから」
好きなひと。こうして口にだすと、本当に好きだと思う気持ちが溢れてくる。とまらなくなるほどに。
「そう……なんですか。どんな人ですか」
新太は苦しそうに顔を歪めて俯くと、低い声で呟く。さくらは一瞬の迷いを振り切り、言葉を繋ぐ。
「私の好きな人は……三つ年下なの」
「え?」
新太が顔をゆっくりとあげる。その瞳が大きく見開かれている。さくらは少し緊張しながら続きを口にした。
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