第七章 あふれる想い

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「見た目はかわいいのに、中身はすごく男の子っぽい。プロゲーマーだからって三日連続徹夜でトレーニングなんて無茶をして、風邪をひいたりするから目が離せない。しかも熱にうなされながら告白してきたり……」  ふいに手がのびてきて、さくらの口を塞いだ。新太をみると顔が真っ赤だった。 「それ以上言わないでください。……っていうか、お願いだから俺に言わせて」  新太は切なげに目を細めた。口にあてられた手のひらが、ゆっくりと頬に移動して、すっぽり包み込む。  想像していたよりも、大きな手のひら。その暖かい手の感触もさくらの心をきゅっと締め付ける。 「いま俺が、どれだけ嬉しくて死にそうになっているかわかりますか? 心臓ヤバい」  なんて言っていいか分からず、ただただ新太をみつめることしかできない。ふと頬にあった新太の手のひらがそっと離れて、さくらの手を掴み彼の胸に置いた。 「凄く、早い」  さくらがびっくりしたように呟いて、新太をみあげた。まるで短距離走をした後みたいな鼓動の速さを、さくらの掌が間違いなく感じとる。  新太と目が合うやいなや、強く抱きしめられた。しばらく彼の腕のなかに閉じ込められる。小さな温かいその空間で、お互いの鼓動が反響している。しばらく耳を澄ませていたら、そっと耳元で囁かれた。 「さくらさん、好きです。最初に会ったときから。あのときから苦しいほど好きでした」
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