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大学構内の中庭。新太はベンチにすわり、さくらの授業が終わるのを待っていた。
さくらの就活も最終局面をむかえ、いそがしい。新太もゲームのトレーニングと学校にくるだけで精一杯で、中々さくらとあえない。会えて週一回がいいところだ。
それでも毎日メッセージでやり取りして、それだけじゃ足りないから電話で声を聞いて。少しでも会えそうなら、こうして時間をやりくりして会う。
(やっぱりマジで好きじゃないと、つきあうなんて無理だわ)
お互いの気持ちがわかってから、自然な流れでふたりはつきあうことになってから。新太は自分自身の変化に驚いてしまう。
そもそも今までの新太なら、マメに連絡をとりあうどころか、トレーニングの時間を削ってまでデートをするなんてありえなかった。
相手がさくらと全然違う。本当に人を好きになると、どんなに忙しくても、寸暇を惜しんでこんなにも会いたくなってしまうものなのだと初めて知った。そしてそのままずっと側にいてほしいと強く願ってしまう、ということも。
さくらの声を直接聞きたい。触れたい。あの艶やかな黒髪にも、白い頬も、ふっくらとした唇も。できれば服に覆われた白い肌にも。もっと触れあいたい。その欲求は日を経るにつれ、深く強くなっていく。
さくらが新太の部屋にきたのは、風邪をひいたあのときだけだったし、うつってしまったらいけないから、密な接触なんてできなかった。
それでもあの時、さくらからされた軽いキスを思い出すだけで首筋のあたりがビリっと痺れる。
異常に萌える。何度もあのシーンを咀嚼してしまう。
(やばい。思い出しただけでドキドキする)
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