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「ケン、新太ってぜんぜんかわんないよね。特にこの感じの悪さが」
「そうでもないぜ。新太、彼女の前では違うから」
ケンがしれっとそんな事をいうから、慌てて否定しようとしたけれど遅かった。
「ええええっ!」
チカがとんでもなく大きな叫び声に新太の声など掻き消され、あまりの声の大きさに耳をふさいだ。
「マジでうるさい!」
新太がその声に張り合うように怒鳴ると、チカは慌てて口を手で覆った。
「ゴメン、ゴメン。びっくりしちゃって。新太のこと、ゲイだと思ってたから」
「はあ?! なんで俺がゲイなんだよ」
思いがけないこといわれて、キッと睨むけれど、チカはお構いなしに笑う。
「だってさ。中学高校ってあんなにいろんな女子から告られていたのに、片っ端から断っていたから。それで新太はゲイなんじゃないかって認識で一致したわけ。それならフラれても仕方ないって」
「ただゲームをやるのに忙しかっただけなんだけど。その自己都合的思考回路、なんなんだよ」
呆れたようにそういうと、ケンと女の子も大爆笑して、いよいよ新太の眉間のシワが深くなったそのときだった。
「新太くん?」
その声に皆振り返る。さくらがいつの間にか、新太たちの後ろに立っていた。
この場から逃げられるとホッとする気持ち以上に、さくらと会えた喜びが新太の胸のうちにふつふつとわきあがる。同級生たちがいるにもかかわらず、自然に笑顔になってしまうのを押さえきれなかった。
「ごめんね。少し遅くなっちゃった」
「全然大丈夫です。じゃ、行きましょう」
さくらの背中に手をおいて、新太はさっさとこの場から去ろうとした。
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