第八章 恋がはじまる

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「ケン、新太ってぜんぜんかわんないよね。特にこの感じの悪さが」 「そうでもないぜ。新太、彼女の前では違うから」  ケンがしれっとそんな事をいうから、慌てて否定しようとしたけれど遅かった。 「ええええっ!」  チカがとんでもなく大きな叫び声に新太の声など掻き消され、あまりの声の大きさに耳をふさいだ。 「マジでうるさい!」  新太がその声に張り合うように怒鳴ると、チカは慌てて口を手で覆った。 「ゴメン、ゴメン。びっくりしちゃって。新太のこと、ゲイだと思ってたから」 「はあ?! なんで俺がゲイなんだよ」  思いがけないこといわれて、キッと睨むけれど、チカはお構いなしに笑う。 「だってさ。中学高校ってあんなにいろんな女子から告られていたのに、片っ端から断っていたから。それで新太はゲイなんじゃないかって認識で一致したわけ。それならフラれても仕方ないって」 「ただゲームをやるのに忙しかっただけなんだけど。その自己都合的思考回路、なんなんだよ」  呆れたようにそういうと、ケンと女の子も大爆笑して、いよいよ新太の眉間のシワが深くなったそのときだった。 「新太くん?」  その声に皆振り返る。さくらがいつの間にか、新太たちの後ろに立っていた。  この場から逃げられるとホッとする気持ち以上に、さくらと会えた喜びが新太の胸のうちにふつふつとわきあがる。同級生たちがいるにもかかわらず、自然に笑顔になってしまうのを押さえきれなかった。 「ごめんね。少し遅くなっちゃった」 「全然大丈夫です。じゃ、行きましょう」  さくらの背中に手をおいて、新太はさっさとこの場から去ろうとした。
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