第八章 恋がはじまる

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「あ、さくらさんですよね。俺、新太の友達で黒田健っていいます」  ケンがすかさず、さくらにニコニコと話しかけていた。睨んでも幼馴染みならではの間合いで、新太を無視する。 「黒田くんどうぞよろしく。川島さくらです」  さくらがにこりと微笑むと、ケンって呼んでください、とナンパで磨きをかけた愛想のよさでナチュラルに話をつないでいく。新太はなんだかいやな予感がした。 「新太が、はじめてさくらさんに会ったときから、話を聞いてました。いやーヤッパリ美人さんですね。恋愛に全く興味を示さず、ゲイ疑惑をもたれていた新太が、一目惚れするのもわかる……」 「ケン、お前ふざけんな! 何、いいだすんだよ」  予感が的中してあわてて話を遮ろうとしたけれど、ケンの口はとまらない。 「こいつ、本当にさくらさんにベタ惚れです。普段メチャクチャ態度悪いくせに、さくらさんに会うときだけは恋する乙女かよって突っ込みたくなるくらいに……」 「お前、本当にうるさいって!」  大声で怒鳴ると、新太あんたがうるさい! と先程の仕返しのようにニヤニヤしながらチカがツッコミを入れてくる。こんなカオスな状態をさくらに見られてしまい、新太は頭を抱えたくなった。 「さくらさん、もう行きましょう」  さくらの手をすぐにつかむと、校門に向かって急いであるきだす。  新太の態度が全然違うよねえ、彼女さん年上美人さんだあ、なんていうチカのムダに大きな声が後ろから追いかけてくる。  さくらの前では、大人っぽく振舞いたかったのに、彼らの中にいたら、まるで小学生みたいに見えてしまっただろうと、新太は大きなため息をついてしまう。
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