第一章 出会い

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 ちょっとマジメな表情でそういう彼は、とてもまっすぐな瞳をしていた。  綺麗な瞳をしていて、男の子としてはとてもかわいい顔立ちをしている。  ついじっと見つめてしまい、不思議な間があいてしまう。新太が困ったような表情を浮かべて口を開きかけたから、あわてて言葉をつなぐ。 「ああ。うん、もちろん。私、この授業うっかり取り忘れちゃって。もし単位を落としたら、それこそ卒業できなくて留年しちゃうからマジメにくるよ?」  新太の表情が安心したようにゆっくりと笑顔に変わった。 「よかった。じゃあ俺も、朝がつらいけど頑張ってまた来ます」  見ていて気持ちのいい笑顔がさくらにも伝染して、微笑んでしまう。 「うん、私も頑張ってくるよ。宜しくね、新太くん」  同じように下の名前で呼ぶと、新太はまた照れたような笑みを浮かべて、素直な様子ではい、と頷いた。   (かわいいな……)  初めて会った気がしなかった。そもそもさくらが初対面からこんなふうに男の子と打ち解けた雰囲気になるのは珍しい。  もしかしたら、彼のふわふわな茶色の髪の毛や、大きな瞳のせいかもしれないと思う。家で飼っているポメラニアンのしーちゃんに似ているから。そう思い当たった。    さくらが帰宅すると喜んで走り寄ってくる家族のアイドル。目がまんまるで茶色の毛はいつもふわふわだ。父親が、自分のものより高いシャンプー使っているとぼやきながらも、まめに洗っているから、いつもいい香りがしている。  さくらのなかで、目の前にいる新太がしーちゃんに自動変換されてしまう。
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