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「さくらさんが大学卒業しても、俺、会いにいきます。さくらさんこそ、卒業したらもう会わないなんて言わないでくださいよ?」
さくらは笑いながら首を振る。そういってくれる新太の気持ちがうれしい。
「社会人になったらさくらさんのまわり、大人ばかりじゃないですか。俺がいよいよ子供っぽく見えちゃうんじゃないかって、俺こそ気が気じゃないですよ」
真剣な面持ちの新太に、さくらもしっかり目を合わせて、気持ちそのままを口に載せる。
「まわりに大人がたくさんいたって全然関係ないよ。新太くんは新太くんで、他の誰とも違う。大事な人、だよ?」
新太はびっくりしたように瞳を見開いたあと、顔が一気に赤くなった。つい口元から笑みがこぼれてしまう。手を伸ばして、新太の熱を帯びた頬を手のひらで包む。
「顔赤いよ?」
新太は悔しそうにしながらも微笑んで、頬にあるさくらのその手を掴む。
「さくらさんがいけないんだよ。不意討ちでドキドキするようなこというから」
上目遣いでさくらを見つめる新太にこそ、ドキッとさせられてしまう。
誰とも付き合ったことがない。前にそういっていたけれど、女の子の心をぎゅっと掴むような、表情、仕草を時々こうやって見せてくる。
かわいい男の子。そんなふうに油断していると、男らしい色っぽさをみせつけられて、年上の余裕なんてなくなってしまう。今度はさくらが俯いてしまう。
新太がさくらの手をとって指を絡めた。テーブルの上で繋がる手。新太の熱を感じて、おもわずその熱を逃がすように小さく息をつく。
「俺だって……」
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